表現教育やドラマ教育を実践してみたい方や、その効果を知りたい方に、実際のワークショップの現場の様子がわかる本を紹介。
ドラマ教育の背景・アプローチ・アイデアを知りたい方は↓も参考に。
今回紹介する3冊は、ノンフィクション・エッセイでもあり、ドラマ教育の現場の肌感が伝わる貴重な3冊だと思います。
イギリスのワークショップの現場がわかる『蜂はチクリと刺すことを知ってますか?』
入門書でも紹介したイギリスで「アプライド・ドラマ」を実践されているナオミさんという日本人俳優の現場でのエッセイ。
ドラマ教育の可能性が、一人称で語られる数少ない日本語の本と言えそうです。
テーマを丁寧に深堀り、プレ・テキストに思いを込める彼女たちに、尊敬の念を抱くとともに、イギリスの事例を知れるのが嬉しい。
「ドラマ教育」は、生身のもの。
どんなに学問的に整理されても、やはり現場で受け取れる価値の大きさとは比較できません。
また、多くのドラマ教育・表現教育を実践されてきているリーダーたちが、「ドラマ教育とは」を言語化するのをためらう理由が、それだと思う。
「伝えきれない」のです。そして現場にいたいのです。
だからこそ、このようにエッセイで伝えてもらえるのはとても大切。
タイトルにもなっているナオミさんのお子さんとの日常でのやりとりが、すでにドラマ。
想像力豊かなこどもとの生活にドラマを取り入れていたい方にも、読みやすくおすすめです。
また、改めてドラマ教育は、それぞれの現場で起きていることが唯一無二であること。
ワークには、深い意図がありながら、予定調和に陥らない。
そのための余白があることが大切だと気付かせてくれます。
子育てにも通じるなあ。
ドラマスクールのワークショップの様子を手記で追う『子どもたちの輝く時を求めて』
飯塚で、20年以上続くドラマスクールがある。
当初は、約2年に及ぶこどもたちがゼロから創作する「ミュージカル」事業から始まった。
この事業のすごいところは、ドラマティーチャーを養成するところから始まったこと、2つの市をまたがるプロジェクトであったことだと思います。
こんなに時間をかけてじっくり文化事業を実施できたこと、そこから20年も続く活動になっていること、全てが驚き!
約2年におよぶ活動がどんな風に行われていったのか、関わった多くの方々の手記から紐解かれている壮大な記録集です。
残すってことも重要だな〜
飯塚のドラマスクールの20年の歴史が詰まった『ドラマという名の冒険』(飯塚ドラマスクールを支える会 山田眞理子編)もあります。
ぜひ、日本のドラマ教育・表現教育を現場主義でやってきた唯一無二の歴史をご覧ください。
高校での演劇ワークショップはどんな?『 高校生が生きやすくなるための演劇教育』
日本の高校の中でも「ドラマ」が科目として存在している学校が、実はいくつかあるのです。
「俳優養成」ではない「ドラマ教育」を高校の中で実践されている、いしいみちこさんの奮闘記です。
福島県立いわき総合高校で、初めての演劇の授業の立ち上げ、追手門学院高校の表現コミュニケーションコースの立ち上げ。
とにかくこども中心に立ったスーパーな先生なのが伝わってくるエピソードの数々。
情熱が伝わってくる文章で、すんなり読めます。
そして、ドラマ教育ってすごい!となることでしょう。
実際に、いしい先生とわたしの立ち位置が近いこともあって、感情移入をしているところもあります。
こどもたちって、大人が真正面から関わること、挑戦の場を並走することで、びっくりするほど進化をとげます。
それに魅せられて、四六時中ずっと考えちゃう!
特に、モヤモヤの原因が繋がって、自分の言葉を持ち始めたときの眼差しの力強さ。
本当に宝物の瞬間です。
青春時代の追体験としてもよし、こんな先生がいたらなあと思いを馳せるもよし、読みやすさも魅力の一冊です。
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